主流はニードルベアリング現在のロードペダルの主流はニードルベアリング。ニードルベアリングはボールベアリングのように内輪が無く、ペダルアクスルを直接ローラーが転がる。そのぶんベアリングの外形を小さくする事が出来るので、結果的に低いスタックハイトのペダルを低く設計できる。
また、もう1つニードルベアリングが選ばれる理由として耐荷重が大きい事が挙げられる。
ペダルのベアリングはBBのベアリングに近い高負荷が掛かる場所なのだが、スペース的な理由でBBより遥かに小さなベアリングしか使用出来ない。
小さなベアリングに負荷を掛けると動きが悪くなったり、最悪ボールがレースに打痕をつけたりするので、サイズの割に耐荷重の高いニードルベアリングはうってつけなのである。
以上の理由からデュラエース、LOOK、TIME、SPEEDPLAYとほとんどのビンディングペダルがニードルベアリングを採用している。
しかし、一見最適に思えるニードルベアリングも中心に、垂直に力を受けないと抵抗の増加や偏摩耗を起こす面倒臭いベアリングでもある。
トラブルを回避するには、シューズのど真ん中にニードルベアリングが来るよう設計する必要があり、スピードプレイ以外は全てセンターにニードルベアリングを据えている。
例えばLOOKはQファクターの調整用に2mmのスペーサーをリリースし、スペーサーの使用を見越してクランク側のねじ切り部を敢えて長く取っている。
Qファクターを広げたいならクリートの移動幅を大きくした方が簡単だが、そうしないのは出来る限りシューズのセンター付近にニードルベアリングを据えた方が耐久性で有利なのとスムーズな作動が得られるからである。
ちなみにこのスペーサーはスレッドが長いLOOK以外に使うのは御法度である。
内側にある大径ベアリングはほとんど荷重を受け持つことは無く、ペダルボディとペダルアクスルの並行を保つためだけに存在する。
一方デュラエースは4mmのロングアクスルをラインナップする事でQファクターを広げたいユーザーに対応している。
ニードルベアリングにとって最も相性が悪いチタンシャフト前述のようにニードルベアリングはアクスルに対し垂直に荷重をかけて使用する事が望ましい。しかしアクスル自体も荷重を掛ければ当然歪むので、出来る限り太く高剛性に設計され、ペダルボディは可能な限りアクスルと並行を保つように設計される。
しかし、それだけ水平を保てるように設計したのにアクスルにしなりの大きなチタンを用いるとどうなるか?
シャフトがしなって斜めになったシャフトにニードルベアリングは真っ直ぐ押し付けられるので本来のメリットである線で荷重を分散する事が出来なくなり異常な抵抗の増加、異常摩耗を引き起こす。
イメージとしてはローラーの角を立てて転がる感じで、重めのギアに掛けて左右にバイクを振るような場面で渋さを感じる。
チタンにはもう一つマズいことがあって、例えばセラミックベアリングのメリットは変形の少ないセラミックを使用する事で転がり抵抗を低くする事だが、ニードルベアリングが転がるアクスル自体を柔らかいチタンにすると言うのはそれと逆の行いと言う事になる。
チタンアクスルを引っこ抜くとニードルベアリングが斜めに当たって片減りした跡が確認できる。ニードルベアリングのローラーは片側をチタンアクスルにめり込ませながら回っているという事である。
軽量化のメリットが意外に小さいと言うのはよく語られる事だが、恐らくチタンを使う事による駆動抵抗の増加分はたった50gの軽量化では到底補えるものではない。
プロがチタンアクスルを使わない理由、デュラエースパーツにチタンをふんだんに使用するシマノがペダルにはチタンを使わない理由はこれだろう。
ヒルクライムでさえ結果的に遅くなると言うならチタンアクスルペダルはただの贅沢品でしか無い。使用するとニードルベアリングによって磨耗するので飾る以外に用途が見当たらない。
ニードルベアリングをセンターに配置出来ないスピードプレイスピードプレイは構造上根元にニードルベアリングが配される。通常のペダルとは逆にアクスル先端にボールベアリングが取り付けられるのだが、ニードルベアリングから先はアクスルがどんどん細くなるのでかなりしなりやすい形状と言える。
しなりを抑制する為と耐荷重の確保の為に外側のボールベアリングは二重になっているが、ここにチタンアクスルを使用してしなりが大きくなれば、大きな抵抗を生むことになるだろう。
細いアクスル先端の変形を抑えてベアリングのスムーズな作動を維持する方法は出来るだけペダルの内側を踏む事。理想はもちろんニードルベアリング直上を踏む事である。通常のペダルのQファクターは53mm前後なのだが、スピードプレイのチタンアクスルは50mmしかなく多くの人がクリートでシューズを外側に持って行って使用している。
スピードプレイのチタンアクスルは寿命が短いと言うが、細い先端をしならせながら使うのだから偏摩耗するのは当然である。
スピードプレイのクロモリとステンレススピードプレイにはクロモリとチタンのほか、ステンレスアクスルも存在し、クロモリとステンレスの違いがイマイチ分かりづらい。
プロが使用するのはやや高価になるステンレスだが、クロモリとは何が違うのか?
ネットを漁るもろくな情報が無かったが、実物を観察してすぐに謎は解けた。
先ず、長さが違う。クロモリ55mmに対しステンレスは53mmである。ただ、ステンレスはかなり細かく全長の違うシャフトが用意されているのでプロは困らないが、ペダルと長さ違いのシャフトを買うとペダル本体と合わせてチタンモデル並の値段になってしまうため、日本のユーザーは価格的にも入手し易いとは言い難い。
構造の話をすると、有利なのは長いクロモリシャフト。クリートで同じQファクターに合わせると、ペダルに対しより内側にシューズが来る方がアクスル先端のしなり量も小さくでき、スムーズな回転が得られる。
長さ以外の違いは加工精度。ステンレスは遥かに凝った作りとなっており、おそらくニードルベアリングが転がる条件としても硬く高精度なステンレスが有利と思われるが、実際小生の使用しているものを手で回すとクロモリの方が若干動きが良い。
その他ステンレスは10g程軽いのだが、じつはステンレスアクスルは中空のパイプ状になっている。中空構造とする事でシャフト部分を軽く強くする事が出来るため、重量はやや軽いが曲げに対しては強くなっていると思われる。
細い先端部分と違い、根元のシャフト部分はしなっても抵抗を生む事はないので、適度にしなるクロモリの方が好きと言う人もいるだろうが、そもそもその違いに気づく人自体ほとんどいないだろう。
機能面、寸法的にもクロモリモデルがおすすめだが、クロモリは錆びると言う報告もあるので、気になる人はステンを選んで置けば安心である。
まとめとりあえずチタンと言う素材はペダルアクスルに限らず使用に当たっては十分考慮する必要がある。
他ではスプロケの歯もチタンだとチェーンに絡みつくような柔らかさを感じ、実際抵抗値が変わらないものなのか気になる。プロの世界ではクイックリリースにチタンを使う選手がいない事は知られているが、中にはスプロケもチタンを避ける選手がいるようである。
他では、ハンドル周りにチタンボルトが良く使われるが、季節の移り変わりによる熱膨張でトルク不足やオーバートルクになることもあるらしい。
チタンは鉄より軽くアルミより強い。しかし、逆に言えばアルミよりは重く鉄より弱いのだ。駆動系に使用する素材として、スチールから置き換えるだけで3割程度の軽量化が可能だが、それによって予想外の損失を被る可能性がある。
現在ヒルクライムでチタンアクスルを使用している人は、クロモリアクスルに変更してベアリングの動きが良くなる事でタイムを短縮出来るかも知れない。
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